イノベーションは経験と強い課題意識から生まれる

ラテラル・シンキング

さまざまな企業で新規事業を興すことが経営課題になっているのでしょう。だからといって「イノベーションを促進する」という言葉がスタッフ部門から聞こえてくることが、私は気になります。イノベーションって促進できるものでしょうか。

開発ではイノベーションは当たり前

インベンションといえば発明ですが、イノベーションは既存の技術の活用方法を変えたり、組み合わせで新たな価値を作ることです。こういったことは開発では日常茶飯事で特許にしたり、商品にしたりしています。

スタッフ部門が主導するのはおかしい

そもそもイノベーションしたことのない人たちが、年に何回もイノベーションしている人たちに対して、イノベーションを促進するプロセスとか、組織とか、環境とか色々言ってくるのは間違っています。

彼らはイノベーションがどのようにして生まれるか体験もしていません。どこかの本に書いてあることを鵜呑みにしてペラペラな意見を言ってくるのが関の山です。

一番大事なのは課題意識

まずイノベーションとは、プロセスや組織や環境で生まれるというものではありません。過去の経験とか技術的な知識とかバックボーンがあって、そこに強い課題意識を持つことで、運がよければイノベーションにつながるものです。

強く課題意識を持った上で、ラテラル・シンキングなどの思考法を活用することにより、
多少良くなるかもしれませんが、思考法はあくまでもツールでしかありません。

課題意識そのものがニーズ

ニーズのないイノベーションに価値がないことは分かりやすいですが、ここでニーズというのは顧客要求ではなくて、開発者が解決したい課題に対しての対策になりえるといったニーズです。

顧客要求というのはそもそもあいまいだったり、ちょっと本質じゃないことがあります。開発者による解釈が必要です。 その上で開発者が解決したい課題というのは具体的です。その課題を解決するイノベーションには必ずニーズはあるものです。

シーズ先行はない

何か新しい技術がある場合、それを使った商品をイノベーションしようと考えます。しかし、思いついたアイデアを良く見て欲しいのですが、自分が過去不便に思ったりして課題意識をもったものばかりではありませんか。

シーズがあって何かを思いつくのではなくて、過去の人生の中で色々と経験してきた課題意識の中から、シーズという新しい情報を入れたときに、過去の経験の記憶と結びつきが生まれアイデアとして出てきたのです。

課題を潜在意識に植えつけておく

このように「あんなことできればよいのにな」「ここ変だよな」とか何でも良いので、課題意識を持つことが大事です。しかもできるだけ具体的にしっかりと考えてみることです。

課題意識を持ったときに解決策がすぐに見つからないことも多いでしょうが、問題はありません。いっそのこと忘れてしまいましょう。

忘れてしまっても潜在意識はちゃんと覚えているもので、その解決策となるシーズと出会ったときとか、その後ふとしたとき考えた記憶が蘇ってくるでしょう。しっかり考えていないと記憶は蘇らないかもしれませんが、人間の潜在意識というのは意外にすごいものです。

よく風呂に入っているときに良いアイデアが生まれるというのも、こういったことだと思います。課題意識無しに風呂に入っても良いアイデアは生まれないはずです。

大抵の解決策は過去の経験からも出てくる

別に新しい情報に刺激されなくても、過去の経験から解決策が出てくることもあります。過去の経験と課題がすぐに結びつくというよりも、時間をかけてつながるものです。

全く忘れてしまっていたことも、なぜか思い出したりもします。過去の大学の授業だったり、子供の頃作った自由研究だったりが全部鮮明に思い出せなかっとしても、それをヒントとして課題解決につながったりもします。

スティーブ・ジョブズがマッキントッシュにカリグラフィーを取り入れたのも、PCの文字が醜いという課題意識とカリグラフィーの授業をもぐりで受けた過去の経験とが結びついたものだったと思います。

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課題意識を持つことを習慣とする

ジョブズ自身は2005年のStanford大でのスピーチでconnecting the dotsと表現していますが、まさにそうだと思います。彼には考える癖があったので、課題意識を持つことが習慣になって経験が後に役立つことが多かったのだと思います。普通の人との違いはここにあります。経験だけすごい人なんていくらだって居ます。

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ジョブズは容易くやったかもしれませんが、考えることは多くのエネルギーを使いますから普通の人には難しいものでしょう。

イノベーションは必ず起きるものではない

ジョブズも言っているように未来を見通して経験を積むことはできません。内容はどうであれ色々な技術に触れる経験は開発業務を通じてできるし、人は生きていれば色々な経験をします。これは自由にやるべきでコントロールすべきことでもないでしょう。

大事なのは強く課題意識を持って潜在意識に焼きこんでいくことです。しかし解決したい課題に対してあなたがイノベーションできる経験を持っているとは限りません。これはどんな課題に対してもイノベーションできる人は居ないということです。変に時間と根気を使ってがんばらないことです。あきらめることも必要です。

プロセスや組織や環境でもイノベーションは起きません。報われるか分からなくても脳みそに汗をかいて多くの課題に取り組む努力によって、いつかひとつイノベーションという花を開かせることができるということです。

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