こうすけ君のQCストーリーの作り方の事例

QCストーリー
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この物語はフィクションでQCストーリーを通じて問題解決を行うステップの概要を確認していただくことを目的に作られたもので、登場する人物、大会等は全て架空であり実在のものとは関係ありません。

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はじめに

こうすけ君は半年後にシドニーで行われる世界大会の選考会を控えた100m平泳ぎの選手です。現在こうすけ君はこの種目で国内4位で、選考基準では選考会で上位2位までに入る必要があります。

テーマの選定

現状は国内4位の実力ですが、世界大会に出場するためには上位2位までに入る必要があります。こうすけ君は水泳雑誌から各選手のベストタイムを調べてみました。

順位選手ベストタイム
1位とおる君1分3秒17
2位よしあき君1分3秒25
3位さとる君1分4秒06
4位こうすけ君1分4秒10
5位よしのぶ君1分4秒13
6位ひであき君1分4秒32

ベストタイムを比べると、こうすけ君は1分4秒10で、2位のよしあき君は1分3秒25で、0.85秒の差があることが分かります。この差(ギャップ)が問題になります。

こうすけ君は絶対に世界大会に出場したいという強い思いからも、「6カ月間で100m平泳ぎのタイムを0.85秒縮める」というテーマで改善活動をすることに決めました。

QCストーリーのテーマの選定
テーマの選定は、改善すべきことを決めるためのQCストーリーの最初のステップです。マネジメントとしてテーマ選定が最も重要なステップです。より良いテーマ選定をすることが、より成果を導き出します。 テーマ選定理由を明確にする あるべき...

現状把握

攻めどころを見つけるべく、スタートからターンまで、ターンからゴールタッチまでの2つに分割してみてみることにしました。こうすけ君は前半が30秒82で、後半が33秒28でした。他の選手の前半と後半のタイムも大会のビデオを取り寄せて調べることにしました。

選手前半後半
とおる君30秒9132秒26
よしあき君30秒8132秒44
さとる君31秒2532秒81
こうすけ君30秒8233秒28
よしのぶ君31秒2032秒93
ひであき君30秒7833秒54

上位6名の前半と後半のタイムを調べてグラフにすると下のようになりました。

records 1st and 2nd half

前半と後半でのタイム

前半にタイムのばらつきが少なく後半のばらつきが大きくて、後半が一番早かったとおる君が32秒26で、こうすけ君は33秒28で1秒02の差がありますが、前半は0.09秒しか違わないことが分かりました。

こうすけ君は攻めどころは後半で、後半を改善することとしました。

QCストーリーの現状把握
現状把握では単に現状を知るのではなく、選定したテーマに対して攻めどころを見つけることを目的とします。現状を調べることで、プロセスやシステムのどこを改善すべきかを特定していきます。「ばらつき」に着目することがコツになります。ただデータが十分に...

活動目標の設定

後半のタイムをどれくらい改善したらよいかを考える際に、前半でどれくらい差があるかを考えなければいけません。目標は2位のよしあき君よりも早くなることなので、活動目標の設定ではよしあき君と比較して数値目標を設定することにしました。

2位のよしあき君とこうすけ君の前半の差は0.01秒とほとんど変わりませんが、後半は0.84秒違います。後半を0.85秒縮めることが出来ればよしあき君と並ぶので、「6カ月間でに後半のタイムを0.9秒縮める」ことを目標と設定しました。

QCストーリーの活動目標の設定
活動目標の設定では、この活動の目標値を決めます。現状把握で見つけた攻めどころに対して、それをどこまで改善するのか達成レベルを明確にします。 進め方 現状把握で見つけた攻めどころとなる「ばらつき」に対して、どれくらい改善するのか目...

要因分析

後半が遅い要因を洗い出すためにこうすけ君はFreeMindを活用して特性要因図の代わりにマインドマップを作ることにしました。

MECEを心がけて、まずはフォームと後半なのでターンを考えました。フォームは泳ぎ方ですがそれをどれくらいのペースで行うかも要因になりペースも入れました。水の抵抗が少ないことは重要なことで水着の影響も考えました。持久力とか筋力とかも考えましたが、フォームやペースの副次的なものであると考え入れませんでした。

fishbone by freemind

特性要因図の代わりにマインドマップを作成

フォームはコーチからも他の選手達からも綺麗なフォームだと褒められていたので、これ以上の改善点はないのではないかと考えました。ターンに関しても得意だし、改善しても効果が少ないだろうと考えました。水着はスポンサーから新素材で競合他社と同等以上のものが6カ月以内に入手できることになっていたので排除しました。

残ったペースをもう一度見直すために、ビデオを見ながら他の選手とのペースの違いを検討することにしました。そこでストローク数を見ているととおる君もよしあき君も21回に対して、こうすけ君は22回ストロークしている違いを発見することが出来ました。

選手ストローク
前半後半
とおる君1721
よしあき君1721
さとる君1821
こうすけ君1722
よしのぶ君1822
ひであき君1723

一回のストロークでの推進力を増やすことで蹴伸びの時間を伸ばすことが必要だと思い、コーチに相談したところ、筋力アップを勧められました。

選手の身長と体重と体脂肪率が入手できたので、それをベースに筋肉量を算出してみました。

選手身長体重体脂肪率筋肉量
とおる君182cm72kg11%32.0kg
よしあき君176cm71kg11%31.6kg
さとる君183cm66kg10%29.7kg
こうすけ君178cm65kg11%28.9kg
よしのぶ君171cm61kg10%27.4kg
ひであき君188cm65kg11%28.9kg

筋肉量と後半のタイムの関係を散布図を作って確認したところ、筋肉量が多いほど後半のタイムが早くなる相関がみられることを確認しました。

筋肉量と後半のタイムの関係の散布図

QCストーリーの要因分析
要因分析では現状把握で明確にした攻めどころについて、「ばらつき」を引き起こしている要因を複数抽出して、データによって絞り込み、主たる要因が何かを特定していきます。 このステップがQC活動において最も重要です。「ばらつき」を生じさせてい...

対策の立案

こうすけ君は要因分析によって筋肉量を増加させることで、後半のタイムが改善できることが分かりました。筋トレは日々行っているし所属しているスイミングクラブに設備もあり、多少の知識は持ち合わせています。

本来であれば系統図を使って、実現性、効果、作業性とコストを比較して適切な対策を絞り込むところですが、今回はスポンサーの協力もありコストは無視して考えられたので、コーチに水泳選手に適した筋肉を鍛えてくれる専属のトレーナーを紹介してもらうことにしました。

契約した専属のトレーナーが筋力増強のためのトレーニングメニュー、食事指導、トレーニング環境を提供してくれることになりました。

QCストーリーの対策の立案
対策の立案のステップでは、要因分析で確認された問題発生メカニズムから特定された要因に対して対策を立案します。 要因が非常に単純で簡単に対策ができるのであれば、即対策の実施に進みます。しかし容易に対策を行い二次障害が発生する可能...

対策の実施

専属トレーナーは、6か月後にこうすけ君の筋肉量を3kg以上増やすべく、以下のことを実施します。

  • 最適な高重量トレーニングメニューの作成
  • 高重量トレーニングができる環境の提供
  • こうすけ君の実施指導
  • 食事指導

こうすけ君は通常の水泳の練習の合間を使って、以下のことを実施します。

  • 水泳の練習内容の報告
  • 専属トレーナーのジムへ毎日行く
  • トレーニングメニューに従ったトレーニングの実施
  • 食事指導に基づき食事をし、写真をトレーナーに送る
QCストーリーの対策の実施
対策の実施では、前ステップで決めた対策を実施するわけですが、実施計画に基づいて対策が確実に実施されているか、対策の進捗は予定通りかを把握することが大切です。 事例に学ぶQCストーリーの“本当”の使い方posted wi...

効果の確認

六か月後こうすけ君の体重は7kg増え72kgとなり、見た目にも明らかに筋肉量が増えているのが分かります。筋肉量にすると3.1kg増えたことになります。

そして選考会を迎えました。こうすけ君は前半17ストロークで、後半も力強い泳ぎで21ストロークで泳ぎ終え、1分3秒20の二位のタイムをマークして見事世界大会の出場権を獲得することが出来ました。

QCストーリーの効果の確認
効果の確認では、対策を実施した結果、対策前と比較して効果がどれだけ出たかを確認します。活動目標の設定で定めた管理特性で対策後の効果を測定し、その値が目標値に達しているかどうかを確認します。 もしも目標値に達していない場合は、再...

歯止め

その後こうすけ君はトレーニングを続けて世界大会にとおる君と出場し、とおる君を上回る4位という好成績を収めることが出来ました。しかしあと一歩でメダルに届くところでしたので、世界レベルの体格の獲得のために専属トレーナーとの契約を延長することを決めました。

QCストーリーの歯止め
対策がうまくいったものを標準化します。歯止めとは、再発防止のことで、成功施策を標準化して広く業務プロセスに取り入れることにより、問題の再発を防ぎ、体質強化につなげていきます。このステップはマネジメントが主に行います。 業務のや...

おわりに

こうすけ君はQCストーリーに基づいて、要因を掘り下げていき影響の大きい要因に対して適切に対策を打つことで目標達成を実現していますが、もしも経験や勘を頼りにがむしゃらに泳いでいただけでは期間内に目標は達成できなかったと思います。

QCストーリーのような要因を解析して検証する解析的アプローチが、問題解決を効率的に行うために重要か確認いただけたかと思います。

問題解決型QCストーリーによる問題解決の解析的アプローチ
解析的アプローチは、すでに起きてしまった問題に対して解析し、因果関係を明確にし、問題の原因を改善またはなくすことで問題を解決する方法です。 解析的アプローチとして、代表的な手法はQCストーリーです。QCサークルなどの小集団活動として問...

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